第8章 unexpected
「みんな、お家に帰ろう。さぁ。」
手を伸ばすが、子供たちは尻もちを着いたまま後ずさりしてしまった。
「しっつれーなガキ共だな!」
「こらクマ!…あっそうだ!」
そう言ってレイは乱暴にクマを掴み、子供たちの目の前に翳しフルフル振ってみせた。
「ね、見て!可愛いくまさんでしょ?!
お喋りもできるんだよ??ねっ!クマ!」
「うっ・・・」
揺すられているクマはそのままガクンガクンしている。
「クマ!ほらなにか喋って!」
「…うー…なんでおいらがこんな」
「「うわぁぁあ〜喋ったぁ〜…」」
子供たちの顔がパッと明るくなり、たちまちクマを触りだした。
クマが耳を引っ張られたり腕を振り回されたりしている光景を見て五条は盛大に噴き出し、スマホを取り出した。
「やべぇ、傑作すぎ〜!記念写真撮っとくわ!」
「おい五条!てめふざけっ」
クマが喋れば喋るほど子供は喜んで弄くり回す。
この機を逃すまいと、五条はさぞ面白そうに連写している。
「すごいなぁ〜ねぇこのクマさんもらっていいー?」
女の子のその言葉に、レイは優しく笑った。
「それはできないんだなぁ〜。
このクマは私の宝物なの。とても大事なね…」
子供たちは、え〜と残念そうな声を出しながら、クマを抱きしめている。
「おいレイお前っ!
それなら宝物らしく扱ったらどうだ!」
「扱ってるじゃん、いつも。」
「はいは〜い!じゃあみんなで記念撮影〜!!」
突然五条が全員を引き寄せ、インカメラを翳した。
パシャリと音がし、可愛いクマのぬいぐるみと5人の笑顔がそこに切り取られた。