第50章 promise ■
「そ…れは……」
数秒の沈黙の後、レイが目線を下にさげ、うつむき加減で静かに口を開いた。
「九十九さんだけのせいでは、ないですよ…
1番近くにいた、私たちのせいでもあるし、
…彼本人のせいでもある…。
裏を返せば、誰のせいでもない…」
クマは浴槽に腰掛けたまま、遠くをボーッと見つめている。
「あの頃の私たちは、何も知らなかったんです。
何も考えようとすらしていなかった…
彼のことも…自分のことも…
世界のことも…未来のことも…」
誰のせいでもあるし、誰のせいでもない。
ただ私たちは、
想像力がなかっただけ。
愚かで、浅はかだっただけ。
そして、たった1人のかけがえのない人を
救うことができなかったという罪を…
一生背負うだけ。