第48章 hesitation
「……ちょっと…嘘でしょ…」
はぁーーーー……
五条はスマホを放り投げてベッドに大の字になった。
このベッド、こんなに広かったっけ…
いつもは隣に大好きな女がいるのに…
ギュッて抱きしめて、めいっぱい香りを吸い込んで、キスをして、この上なく安心して眠りにつく。
こんな日常が当たり前になってた。
でもそれがどんなに奇跡であるかってことも
僕は分かってたはず…
なのに…
「はぁー… レイー…
声聞きたい…抱きしめたい…ちゅーしたい…」
せっかく僕のものになったっていうのに…
また離れてくの?
嫌だ、そんなの絶対。
"はぁ…呆れた男だ。君は恋人のくせに彼女のことを何も知らないのかね。
彼女のことを本気で見ようとしているのかい?"
なんだよそれ…
じゃあレイは?
レイは僕のこと本気で見てくれてる?
過去を忘れるなんて無理なことくらいわかるよ。
てか僕だって同じだし。
きっとレイは、
過去の自分を責めて、今の幸せに罪悪感を感じてるんだろ。
本当はあのとき全部、
僕のせいにして僕を罵ってほしかった。
僕が自分の罪を軽くしたかったからじゃない。
なによりレイに軽くなってほしかった。
少しでも…。
でも、
やっぱりレイはそういう子じゃなかった。
僕もレイも、
過去を忘れられるわけないし
きっと一生自分を呪い続けるだろう。
でも僕はねぇ、
レイが思ってる以上にガキなんだよ。
この歳でも全然大人なんかじゃないんだ。
くまの言う通り、
僕はあの頃から何も変わってない。
レイの幸せを1番に願いつつも、
心の奥底では、嫉妬心と焦燥感が渦巻いてる。
そんな本当の僕を
きっと君は知らないだろう。