第48章 hesitation
"こういったことが次また起こった場合は、迷わず私の元へ来ること。
あの男にはお灸を据える必要がある。"
レイは前回の喧嘩の際の冥冥の言葉を思い出し、すでに旅行用に荷物を詰めていたスーツケースを持って部屋を出ようとした。
そこで思いついたように例のペンダントが入っている引き出しを開けた。
……これも持っていこう。
ガチャ…
カタカタ
ボーッと沈黙したままでいた五条は、音のする玄関のほうに目を向けた。
「まさか……」
急いで玄関に駆けつけていくと、スーツケースを引きづってまさに今ドアを開けようとしているレイがいた。
「…ちょっとレイ。どこ行く気?」
「どこでもいいでしょ。」
目も合わせずにそう言うレイの片手からは、ペンダントの鎖が垂れ下がっていた。
「なっ…それまた出したの?」
「……それって?」
「呪いのペンダントだよ」
ハッとしたように目を見開いて五条を見ると、五条は眉間に皺を寄せて上目遣いでサングラス越しにこちらを睨んでいた。
「呪いのペンダントってなに…?
なんでまたそんな酷い言い方するの…」
「事実じゃん。100年の呪いから覚めたんじゃなかったの?忘れるって誓ったんじゃなかったの?」
「・・・」
黙ったまま睨んでくるレイの元へつかつかと歩み寄り、五条はそれをひったくった。
「っ?!なにすんの返して!」
「これがあるからいつまでも引きづってんだよな?さっきの言葉もそうだけど…ちょっとおかしいよレイ」
「おかしいのはどっち?!ほんっとーになんにも分かってない!」
その瞬間…
シュパッー…
「っ!!!」
五条は呪力でそのペンダントを跡形もなく消し去ってしまった。