第7章 rival of life■
五条の頭の中には今日クマに言われた言葉が反芻されていた。
"あ、思い出した。そーいえば、悟はたった1人の大事な親友だから、仲良くしてやってくれって言ってたっけなー。無理すぎて忘れてたわ。
親友だけど、敵なんだってさ。
最大の敵なんだってよ。意味わかる?"
真っ直ぐに夏油を見つめる。
2人を抱きかかえたままの夏油も真っ直ぐにこちらを見つめている。
「俺も傑のこと、たった1人の大切な親友だと思ってるよ」
夏油は訝しげに目を細める。
いきなりなんだ?と言いたげな顔だ。
「でも、傑と同じように、最大の敵だとも思ってる。
意味わかるかなー?」
ニッと笑う五条に、夏油は真顔のままだ。
「…私は……」
ゆっくりとその薄い唇が閉じ、そしてまた開いていくのが分かる。
「…私は…親友のままでいたいんだよ。悟。」
静かな口調で、しかしハッキリとしたその言葉が鼓膜を揺らした。
「ふん。俺もだよ。たとえ敵対したとしてもね。」
夏油は薄ら笑ったあと、愛おしそうに腕の中の2人を見つめながら部屋を出ていった。
「お前って…多分俺よりイケメンだよな、傑…」
五条は1人になった部屋で、静かにそう呟いた。