第6章 Teddybear
「くっ…弾かれたっ…」
クマの連打攻撃で女怨霊の姿は薄れ、即座にクマのパンチが夏油に飛んできた。
夏油はすんでのところでパシッとその手を掴み、いつの間にか近接戦になっていた。
その組手試合のような光景は凄まじく速く、目視しているのもなかなか困難で、レイも五条も目が離せなかった。
「ではそろそろ本気を出そうかな…
いいかいクマ助…」
「てめぇ舐めてんのかロン毛野郎?!
初めから本気を出しやがれっ!」
その瞬間、大きな龍が夏油の周りをぐるぐると回りながら現れ始めた。
「…呪霊操述…虹龍…」
「えっ!いきなりそれ?!」
レイはつい叫んでしまった。
それは夏油の手持ち呪霊の中で、今のところ最高硬度を誇る龍神の形をした強力な呪霊。
かなりクマのことが心配になってきてしまった。
「いいぞ傑〜!とっととやっつけちまえ!」
五条はやはりノリノリだ。
しかし次の光景には目を見張ることとなった。
ググググググ……
「えっ…?!」
クマの目に鋭い光が宿り、可愛らしい目は獣のような三日月形に変わった。
そしてクマの全身からは凄まじい青い炎が滾りだし、毛並みはボワッと逆立ち始めた。
その瞬間から、可愛らしいテディーベアーはどこにもいなくなってしまった。
「なんじゃありゃ?!プーさんの覚醒?!」
「わっ、かんないけどっ…なんかすごすぎ…」
五条とレイは屋根の上から冷や汗を流しながらその姿を凝視する。