第43章 MY ALL
「…っ、待って!」
懇親の力で彼の胸元を掴んだ。
「あの言葉…言いたかったな……」
「え……?」
「でもやっぱり…言わなくてよかった…
そんな呪いを君にかけたら…きっと君は優しいから、悟と幸せになろうとしていなかったよね…」
耳元の儚げな囁きは、今まで聞いてきた彼のどの声よりも切なく響いて、涙が止まらなくなった。
「でも…本当は言いたかったんだ、いっぱい…
それだけは分かってくれ。」
顔を上げると
眉をひそめて悲しげな笑みを浮かべた
彼の顔が目と鼻の先にあった。
「もっと君と一緒にいたかった…っ…」
彼の目には零れ落ちそうなほど涙が滲んでいた。
温かくて優しい手が、ゆっくりと近づいてきて
レイの涙を拭った。
初めて彼に涙を拭われたと思った。
その瞬間に頬を伝った彼の雫を
今度はレイが拭った。
「… レイ…ありがとう。」
あの頃の、大好きだった
その優しい笑みで笑いかけてくる彼に
ハッと目を見開いた瞬間、
何事も無かったかのように先程の光景が広がっていた。