第43章 MY ALL
「僕も多忙だし、お前と邪魔抜きで話せる機会は何気に貴重なんだ。」
「あなたが今の呪術界を嫌っているのは分かりますが、私はこれでも規定側の人間です。宿儺の器に対してあなたがどのような思惑を持っているのか知りませんが…」
「宿儺の器じゃない。あくまで虎杖悠仁という一個人についての話だよ、これは。」
「それを切り離して話すことが許されるほど、彼は気楽な身の上ではないはずですが。」
「悠仁はさ、真っ直ぐな子なんだよね」
彼の指先がグラスの縁を撫でる。
弦楽器の高音のような響きが微かに鳴る。
「覚悟も度胸もある。戦いに必要な思い切りも。それでも、真っ直ぐすぎるところはある。そういう子は、1度でも心折れた時が心配なんだ。」
「それを私に話してどうしろと?」
「言ったろ?僕は多忙でね。精神的な成長のケアまで手が回るとは言えない。1度お前に預ける機会があると助かるよ」
「…私がその頼みを聞くとでも?」
「だから頼んでるんだよ。呪術師にしろ宿儺の器にしろ…1人の若人の健やかな成長を願う大人として。」
軽薄で、適当で、冗談ともつかない言葉を並べ立てるのが五条悟の常だ。
だからこそ、真面目な言葉は聞けばわかる。