第22章 悲劇
「初めまして。岡崎事務所の岡崎 凛人と申します。兄が社長を務める出来たばかりの小さな事務所ですが、うちでCD出してみませんか?」
遂にこの日が...とうとう、おかりんがスカウトしに来た。
前から見に来てるのは知っていた。
だから、この日が来るのが凄く怖かった...
「はぁ・・・君、いくつ?」
「2、22です。新卒なんです」
「なら俺たちとそんなに変わらないですね。七桜はまだ高校生ですけど。俺たちのライブ見てくれてたんですか?」
「もう何回も来てるよ・・・」
「そうなのか?七桜、知ってたのか」
「最近よく見かけてたから。事務所関係の人とは思ってなかったけど・・・」
本当は知ってたなんて言えるわけない。
「バンさん、機材ここでいいですか?」
話をしてると知らない百が話しかけてきた。
「あ、すみません!お話中にっ」
「いいよ、ありがとう。百くん、今日終わったら打ち上げおいで?」
「いえ、とんでもないです!」
そう言ってその場から去ろうとする百を逃がさないように百の前に千が立つ。
「新曲聞く?打ち上げに来たら聴かせてあげるよ」
「え?えっと、遠慮します。客席で聴けるのを楽しみに待ってます!」
そう言って、素早く立ち去ってしまう。
「今日もライブ楽しみにしていますね」
おかりんも席を立ちどこかへ行ってしまう。
おかりんが話しかけてきたことで、不安な気持ちが大きくなる...
私はジッとしてられなくて、また何度もステージの照明全部のチェックをスタッフにお願いしていた。
だって、それくらいしか守れる方法が見つからない...
「七桜さん」
「百、休憩?」
「はい。最近、よく照明のチェックお願いしてますね」
「うん。ほら、落ちてきたりしたら大変でしょ?」
「そんなに古くなってるんですか?」
「そういうわけじゃないけど・・・」
「七桜さんがチェックお願いしてますし、大丈夫ですよ」
大丈夫じゃないってわかってるから、何度チェックお願いしても不安なの...
「そんなのわかんないじゃん・・・それなのに、何で大丈夫って言い切れるの?落ちてきてからじゃ遅いんだよっ!」
何も知らない百に言っても仕方ないのに、感情任せに大きな声で百に言ってしまった。
百も突然のことにビックリしている。