第21章 九条 鷹匡
やっと落ち着いて泣き止むことが出来た。
「俺、先に戻ってるから。もう少し落ち着いたら戻っておいで」
そう言うと、万は先に私を残して先に行ってしまった。
「1人にしないでよ・・・」
寂しいなと思いつつ、落ち着きを取り戻そうと思った。
「七桜さん、これ飲んでください」
百が水を持って来てくれた。
「泣くと喉渇くって姉ちゃんがよく言ってるので。大丈夫ですか?」
百の優しさに、また泣けてきて泣いてしまった。
「あぁっ!ごめんなさい!泣かないでください・・・」
オロオロしながらも、頭をポンポンと撫でてくれた。
前と同じように、大丈夫ですって言いながら。
「俺じゃ役に立てないかもしれないですけど、何かあったら助けますから。泣きたい時は・・・あまり泣いてほしくないですけど、お、俺の胸でも何でも貸しますし、一緒にいます。笑いたい時は変顔して笑わせてあげます!七桜さんに力になりますから」
百にそんな風に言ってもらえて嬉しい。
いつも気に懸けてくれるし、その気持ちだけで十分だと伝えると百は嬉しそうに笑顔を見せた。
「バンさんも心配してると思うし、戻った方がいいですよ?」
「うん・・・」
「大丈夫です。楽屋まで一緒に行きますから」
私が1人でいたくないのを気付いてくれた。
本当、百は優しいな...
「あまり無理しないでくださいね」
そう言って、百は戻って行った。
中に入ると、万しかいなかった。
「千なら先に帰ったよ。怒ったから顔合わせずらかったんだな。そうとう心配してたから気にすることないよ。俺たちも帰ろう」
帰り道、会話はないけど万に甘えたくなって手を繋いでみた。
万は嬉しそうに笑って、何も言わず何も聞かず、時々頭を撫でてくれた。
その日から少し経ち、九条が万にだけ会いに来たと聞いた。
万が千と私の足を引っ張ってると言われたこと、千が私を好きだとバレていること、言われたことに自分も納得して何も言い返せなかったと隠さず教えてくれた。
「万が足引っ張ってるわけないじゃん!そんなこと冗談でも言わないでよ・・・」
「ごめんな。俺も2人は凄く大事だよ。ただねっ」
「知ってるよ。万が裏方の仕事に興味持ってる事くらい・・・そんなのずっと前から気付いてたよ・・・」
万は私の言った言葉に、驚いた顔をしてこっちを見た。