第21章 九条 鷹匡
九条が来てから、少し経ったある日。
とうとう岡崎事務所、あのおかりんが顔を出すようになった。
だんだんと近づく万の怪我と九条とおかりんの登場に、どうしたらいいか考えることも精神的に一杯一杯になってしまった...
私はライブの度にスタッフを呼び、しつこいくらいに何度も照明のチェックを頼んだ。
迷惑と思われても、変な人と思われても、関係なく何度もチェックしてくれるまで頼み込み、それを何度も見届けた。
万を救いたい、千を救いたい...
1番は事故を防ぐことが出来ることだけど...
それでも怖い...この先の未来がどうとか、わからない。
ずっと先まで知ってるからこそ、今、万を救えたとして...
そしたら、百はどうなる?
百だって大事だし、百がいるRe:valeも好き。
みんなに傷付いてほしくないと思うのは、我儘でしかないのかな...
ここ最近は、練習にも身が入らない。
ライブも小さなミスが多くて、誤魔化しながらやってるけど完璧に出来てない。
こんな時でも、ちゃんとしなきゃいけないのに...
「七桜、やる気がないなら帰っていいよ。ここ最近、ミスも多いよね。こんなこと言いたくないけど、今の七桜は邪魔でしかないよ。やるならちゃんとやって。出来ないなら止めたら?」
千が怒ってる...こんなに冷たい千は初めて見る...
「ごめん・・・」
耐えきれず、楽屋を出て1人になれる場所を探した。
こんな自分が嫌になる...あんな千も初めてだし。
でも、言いたくもなるよね...
ライブハウスの機材置き場の奥まで行き、隠れて声を殺して泣いた。
(こんなの、もう耐えられない・・・どうすれば、みんなが1番いい形にできるの?もう、わかんないよ・・・)
1人泣いてると、足音が近づいてくるのがわかった。
「七桜?」
万が探しに来たのか、優しく声をかけてくれる。
「百くんが心配して俺に教えてくれたんだ。大丈夫か?」
百が遠くでこっちを心配そうに見てたけど、万を見たら安心と不安と色々混じって我慢できなくなった。
「万・・・」
ドッと涙が溢れ、抱きつき子供のように泣いた。
「大丈夫。千も言いすぎたって心配してたぞ。何か心配事か?最近、少し様子も変だし」
万の問いかけに、でもとか、だってしか言えなかった。
泣き止むまで傍にいてくれた。