第19章 バレンタイン
その相手が千であっても、百であっても...百は喜んでくれたかな。
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「七桜、大丈夫か?なんか最近疲れてる?」
「別に、疲れてないよ。ちょっと、百に避けられてる気がするだけ・・・」
今日は万の家に集まっている。
バレンタインから少し経ち、百の態度が少しおかしいことに悩んでいる。
「百くんだけ違うのにしたからじゃないか?スタッフ用とは違うって気付いただろうし」
「モモくんが本命だったんだ?」
「別に本命ってわけじゃ・・・違うのはあげたけど・・・」
「きっと恥ずかしいだけじゃないか?百くんの性格だと、後から考えて色々気付いてキャーってタイプだろ?今頃、変な態度取ってることも後悔してるよ」
「えぇ?何、その都合のいい考え方・・・うちも万みたいになりたい」
そんな風に考えられたらどんなにいいか...
「七桜は七桜でいてくれないと困るよ。万にならないで」
「うちは万にはならないし、なったとしても困らない。何言ってんの?」
万と一緒に名刺ファイルの整理をしながらバカな話に付き合う。
スカウトの声をかけてくれた人の選別と、衣装関係や広告、他にも色んな会社の特徴を付箋に書いて貼る。
「千の前で言うのもあれだけど、七桜は百くんのことが好きなんだろ?」
「なんで・・・?」
「だから本命あげたんじゃないのか?」
「七桜、やっぱりモモくんのこと好きだったの・・・」
「なんだ、千は知ってたのか?」
ちょっと待って...万はさらっと人の好きな人を暴露してるけど、千も実は知ってるってどういうこと...?
千はなんとなく目線とかで気付いたらしい...
別に告白しようとか考えてるわけじゃないと強く強調して言っておいた。
「告白するなら僕にしたら?断らないよ?」
ただ、ため息を吐き、千を放っておく。
スカウトをどうするか万に話を振る。
改めて、スカウトがきてる事務所の名刺を見る。
まだ、岡崎も九条もきてない。
きてるのは八乙女だけか...
まぁ、デビューする事務所はまだきてないけど岡崎で決まりのはず。
その日、スカウトを受けようと思う事務所を決めることはなかった。
岡崎が来たら、万はもうすぐいなくなる...
あの事件までもうすぐなんだ。
助けたい...百は大事だけど、万も大事だもん。