第3章 決定的な出会い
私は中学校に入学した。
音楽活動を始めたいという気持ちを前から両親に伝えていたが、なかなか承諾を得られなかった。何度も説得し、やっと条件付きでOKをもらった。
その条件は、父や知り合いのバンドに参加して音楽をすること、そして1人で路上ライブをする際には大人に付き添ってもらうことだった。
活動を始めると、父の知り合いのバンドに助っ人として呼ばれることも増え、ライブは父の友人が経営するライブハウスで行うことが決まった。メンバーの年齢層は様々で、父と同年代が多かった。
中学生ということで、友達にライブを見に来てもらうことはなかったが、路上ライブでは電子ピアノとギターを持ち歩き、曲ごとに切り替えて演奏。カバー曲やリクエストに応じて歌うこともあった。
子どもが路上ライブをしているのが珍しいのか、意外と人が集まり、常連客も増えて、ライブハウスに足を運んでくれるようになった。
ある日、父の知り合いに頼まれてライブハウスに行った。出番まで時間があり、どうしようか考えていると、メンバーの一人が話しかけてきた。
「七桜ちゃん、いつもライブ終わったらすぐ帰っちゃうけど、今日は時間あるんだし、他のバンドも見学してきたら?演奏を聴くのも勉強になるよ。」
「言われてみれば...お父さんうるさいから、いつも早く帰らないといけないもんね。でも、今から見てもいい?」
「待ってて!俺、一緒に行くよ!中学生一人で行くのは危ないから。」
「何かあったら遥人に殺されるな!七桜ちゃん、一緒に行ってあげろ。」
そう言ってくれたのは、最年少のメンバー・涼太くんだった。何度も一緒に演奏しており、私も父とも仲が良く、楽器も上手で、まるでお兄ちゃんのように面倒を見てくれる。
一緒にカウンターへ向かい、飲み物をもらいながら、見学席へ。そこは客席が立ち入り禁止の2階席で、ステージがよく見える位置だった。
「下見て落ちないように気を付けてね。」
「はーい。」
涼太くんと一緒に他のバンドの演奏を聴くことになり、今まで見たことのない演奏に新しい刺激を受けた。