第12章 ファンレター
3周年記念ライブから少し経ったある日。
今日は学校から真っ直ぐギターを背負ってライブハウスへ。
あの日のライブは緊張したけど、いつもより客席がクリアに見えた。
ピアノを弾きながら客席を見渡すと、百はすぐに見つかった。
心の中では嬉しくて感激で、百に会えた感動でいっぱいになり感情が溢れてくる。
会いたいと思ってた人が自分を見てる...それだけで嬉しかった。
百を見てると心が温かくなる...自然と笑顔にもなる。
そう思って見てると、バチッと目が合ってしまった。
合った瞬間、心臓が一気にドキドキと激しく動き出した。
恥ずかしくてすぐに逸らしちゃったけど...
話してみたいなぁ...近いうち話せるけどさぁ。
そう思いながら楽屋に入る。
「長い手紙だけど、ちゃんと全部読めよ?」
(ん?手紙・・・?)
「手紙って?」
「ファンレター。七桜も後で読んでな」
「うん」
ファンレターって書いてくれた人の思いがこもってて嬉しいよね。
私はギターを置いて着替えるため、楽屋を出る。
(あのファンレターは時期的に百かなぁ・・・凄い嬉しいけど、万との別れも近づいてるってことなんだよね・・・)
どうしたら万も千も百も救う事できるかなって...最近、よく考える。
欲張りなのかもしれないけど...万にはやっぱりいなくなってほしくない。
色んな事を乗り越えて成長してるから、ここで万を救っても千を変えることはできないのかもしれない...百と組む未来もないかもしれない...
(この記憶ってなんのためにあるのかなぁ・・・誰にも言えないって辛い・・・)
楽屋に戻ると、千がポロポロと泣いててギョッとした。
(えっ!?千が泣いてる・・・?)
「ば、万・・・千が・・・」
動揺しちゃって上手く言葉にならない。
「千、泣いてるのか!?」
「べ、別に泣いてなんかないよ」
流れる涙を拭いてるけど、次々と溢れる涙。
ハッと思いつき、スマホを取り出して泣いてる千を連写で撮影する。
万も一緒になって泣いてる千を撮りまくった。
「ちょっ、泣いてない!2人してそんな撮らないでくれる?」
照れくさいのか、万を叩いてる千が少し可愛く見えた。
(百はどんなこと書いてくれたんだろ・・・)
万と千のやり取りを微笑ましく眺める。
(この時間がずっと続いてほしいな・・・)
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