第48章 百の声
それから、何度か音楽番組に出ることがあったけど百の声は戻らないまま...
「俺、このまま歌えなくなったらどうしよう・・・」
「百・・・大丈夫。そう考えるのは良くないよ?追い込んじゃダメ」
「わかってるけど、さすがに何回も歌えないとさ・・・」
「まだ、スッキリしない?千のこと、信じられない?」
「そうじゃない、そうじゃないんだ・・・」
「何か他に思ってる事、あるの?」
「俺、実は七桜に言ってないことあったんだ・・・」
そう言って、俺が思ってることを話す。
「幻滅されたり、男のくせにそんなこと気にするなって思われたらどうしようって言えなかった・・・」
「それだけ、百が千のこと好きって事でしょ?本当、仲良いんだから。大丈夫!百にだってしてくれる。だって、千が初めて一生懸命したのは百なんだよ?」
「でも、このまま歌えなかったら、俺はRe:valeにはいられないよ・・・」
「百・・・」
「ごめん、先に寝るね・・・」
百は1人で寝室に入ってしまった。
記憶の通り、ドッキリ仕掛けるしかないのかな...
そうならないように、デビュー前から気を付けてたはずなのに...
千からの電話。防音室で出る。
「はい・・・」
「七桜、どうかした?」
「百が元気なくてさ、今日は先に1人で寝ちゃった。このまま歌えなかったらどうしようって・・・」
「その事、なんだけど・・・毒盛られてるって事はないよね?今日、楽くんに言われたんだ」
「毒なら、病院行ったときわかるでしょ?」
「最近、行ってないじゃないか。可能性はないわけじゃない」
「誰が、毒盛るの?百は、思ったよりも思い悩んでるよ?調子はいいのに、何回やっても歌えないんだもん。歌えないならRe:valeにいらないって言ってたよ・・・」
「どうにかならないのか?七桜と一緒にいたら安心して治ると思ってたけど・・・」
「それとこれとじゃ、話が違うんだよ。確かに一緒にいるから安心はしてると思うよ。でも、百が悩んでる事には関係ないんだよ。一緒にいても問題は解決できない。話して楽にしてあげられればくらいなんだよ」
「そうか・・・僕も何もできてないから、七桜を責められないね」
「もう少し待ってあげようよ。混乱してるみたいだしさ」
「待つしかないのか・・・そうだね」