第4章 勧誘
千と万を見かけたライブから少し経った今日は、父が組んでいるバンドの助っ人としてライブをすることになっている。
今日はギター演奏ではなく、ドラムと電子ピアノを曲ごとに変えて演奏する。
曲ごとに楽器を変えるのは路上ライブでもしてることだから、なんてことはない。
「お父さん、翔くんとこでジュースもらってきていい?」
「いいけど、1人で大丈夫か?」
お父さんの許可をもらって、カウンターにジュースをもらいに来た。
翔くんとは、お父さんの友達でここのライブハウスの経営者。
翔くんからジュースを受け取り、今日のライブについて話をしていると、翔くんの目線が入り口へ向かった。
「あ、あの2人また来た」
「あの2人?」
不思議に思って同じ方に視線を向けると、千と万がいるのが見えた。
(何でまた来てるの!?)
「あの2人って前から来てるの?」
「いや、来るようになったのはここ最近だよ。Re:valeって名前で少し前からバンド活動してるんだよね。この前七桜ちゃんが出た日も来てたね」
「知ってる。目立ってたし」
「2人ともイケメンだよね。ここではライブしたことないけど・・・ここでもやってくれないかなぁ」
「Re:vale・・・」
(うちとの年の差を考えると結成間もないってところか。)
「翔くん、そろそろ戻るね。またお父さんにうるさく言われるから」
「ったく、相変わらずの過保護っぷりだな。今日も頑張ってね!楽しみにしてるよ!」
「ありがと!」
私は急いでお父さんが待つ楽屋へ戻った。
ー
「あの、すみません」
「はい!ドリンク何にします?」
「お茶2つで」
「お茶2つね。君たちってRe:valeの2人だよね?」
「知ってるんですか?」
「まぁ、これでもライブハウス経営者だからね。そういう情報には詳しいつもり。はい、お茶2つお待たせ」
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」
「千っ聞き方!失礼だろ!」
「はは、いいよ。何を聞きたいの?」
「さっきここで一緒に話してた子って、この前ライブで歌ってた子だよね?」
「そうだよ。今日もこの後出るよ」
「あの子、どうしておじさん達と組んでるの?」
「はは、おじさんか・・・」
「す、すいません!」
「いいよ、事実だしね。個人情報だから詳しい事は勝手に教えられないけど・・・」