第26章 説得
結局こうなるんだよね...
千は嬉しそうに骨折を気にしながら優しく抱きついてきた。
千が少しだけ可愛く見えるのが悔しい...
「七桜、モモくんのことありがとう。始めは迷惑だし勘弁してくれって思ってた。あれだけ毎日来るんだ、酷い言葉もたくさん言った。でも、時間が経って冷静になったとき、モモくんが言ってくれた言葉が頭の中でずっと流れて、その意味をずっと考えたよ」
「バレちゃった?ごめんね、うちが千を説得すべきなんだろうけど・・・自信なかったの。慰めることしかできないんじゃないかって。百がね、Re:vale大好きだから音楽辞めてほしくないって、自分が説得するって言ってくれたんだよ。百は本当にいい子だよ。千もわかってるでしょ?」
千は僕にはもったいないくらい純粋な子だと言った。
それがわかってるなら大丈夫だよね。
私は記憶で知ってるけど、それがなくたって心配はしてない。
千がやりたいと思ったことに賛成するし、どんな決断しても千を信じると伝えた。
「どんな決断をしても・・・」
「そう。千がやりたいことしていいんだよ?百だってそれを望んでるはずだよ?」
「そうね・・・」
千は私から離れると、万にも謝りたいと言ってきた。
そして、万のお父さんにも...
「今度一緒に万のお父さんに会いに行こうか」
「うん、ありがとう」
「万には絶対会えるから。その時でも遅くない。それに、万は千の気持ちわかってると思うよ。自分犠牲にして千を守ったんだから」
千は今でも怪我したのは自分のせいだと思ってる...
気にしなくていいって言ってるのに。
でも、千も前に進もうとしてる。
それに...万は怒ってるわけじゃない。
だって、千を助けたかったんだから...
だから姿も消したんだから...
「七桜、ありがとう」
千は綺麗な涙を流していた。
「泣かないでよ・・・」
ごめんと言いながら、しばらく泣き続ける。
泣いたことがあるのはファンレターを読んだときと、事故があったときだけ。
この人はこんな綺麗に泣ける人なんだと初めて知った...
色んなことがあって、千も少しは人間らしくなったのかもしれない。
「七桜、好き。大好き・・・」
そう言って、また抱きついてきた。
今度は少し強めに...言葉に出して言われるのは、いくら千でも恥ずかしい...