第23章 私の記憶
私はあれから熱が出て、体調が優れない日が続いていた。
万に会いに行きたいのに、動けなくてもどかしい日々を過ごした。
「七桜」
そんな中でも万は毎日会いに来てくれた。
「万・・・」
「体調はどう?熱は引いたみたいだね。よかった・・・ごめんな、守ってあげられなくて・・・男が守ってあげないといけないのにな」
「何言って・・・守ってあげたかったけど、結局怪我させちゃった・・・千のことも不安にさせちゃった・・・」
「本当なら俺が大怪我するはずだったのに・・・俺なんか庇って、バカだな」
「俺なんかって言わないでよ。万に怪我してほしくなかったのに。どうしたらいいかずっと考えてたのに・・・」
我慢していた涙が溢れてしまいそうだった。
「ずっと考えてたって?どういう意味だ?」
ここまで言ったら、もう隠しておけないよね。
言っても信じてもらえるかはわからないけど...
「本当はこの事故は避けられたかもしれないの・・・うちがもっとちゃんと覚えてたら、ちゃんと確認してたら防げたかもしれないの。万も千も救ってあげたかったの・・・」
「照明が落ちて怪我したのは七桜には関係ないだろ?」
「うちね、実は落ちてくることは知ってたの・・・だから、落ちないように防ごうと思ってた・・・助けられたかもしれないのに、助けられなかった・・・万と千に会わせる顔がないよ・・・」
「ごめん。言ってる意味がよくわかんないんだけど・・・照明が落ちてきたのは誰かが仕組んだことで、それを七桜は知ってたってことでいいのか?」
「違う・・・誰かが仕組んだとかは知らない。でも、落ちてくるのは知ってたの」
万は頭を抱え、頭打っておかしくなったのかと言った...
そうじゃないのに...
「もしかして、七桜の様子がおかしかったことに関係してる?千に怒られて泣いたとき、何かあるのかって俺聞いたよな?九条が来たときも様子がおかしかった。わけがあるなら話して。七桜に会わせる顔がないなんて言ってほしくないよ。話してごらん」
万はやっぱり万だ...
どこまでも優しくて、思ってくれてる...
万にそう言われて、ちゃんと伝えようと腹を括る。
万には話しても大丈夫、そう思えるから。
話しを聞いていなくなるのもなくなったらいいのに...
そこまでは無理かな...