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月の虜

第11章 貴女に着物を贈る意味ー石切丸ー(裏)


ーー


よく晴れた初秋。
私は仕事を早々に片付け、縁側で縫い物をしていた。

山姥切「浴衣か。」

そこへ、私の初期刀であり近侍の山姥切が来た。

『そう。秋祭りに間に合わせたくて。』

本丸の皆へ贈ろうと思い、時間を作って縫っている。
短刀たちには甚兵衛を作り、そちらは出来上がっていて。
今は大人刀剣達の浴衣に着手していた。

山姥切「忙しいのに、良くやるな。」

『喜んで欲しくてね。』

山姥切「…そうか。無理はするなよ?」

『はーい。』

ちゃんと計画を立てて始めたし、慣れてきてスピードもアップしたから余裕が出てきた。
もう、最後の一着なのだ。
山姥切には話したが、他の皆には秘密。
サプライズ・プレゼントだ。

山姥切「それは、誰のだ?」

『石切丸だよ。』

山姥切「…誘うのか?祭りに。」

『…ううん。
私が声をかけたら、無理してでも来てくれるだろうから…。』

主に言われたら、断れないもんね。

山姥切「この本丸の連中なら、誰も無理などせずに喜んで共に行くぞ?」

『そうかもしれないけど…下心があるからね。』

山姥切は…
何も言わなくても、分かっている。
私が石切丸を想っていると。
一緒に行きたいけど、同じ気持ちじゃないなら辛いだけ。
だから、誘わない。

いや、怖くて誘えない。

山姥切「…気が向いたら、俺たちと行こう。」

『ありがとう、山姥切。』

山姥切は山伏と行くのだろうか?
堀川は…和泉守とだろうし。
皆、刀派や仲の良い者同士で行くはずだから尚更誘いづらい…
ならば、私は本丸で留守番していよう。
皆の土産話を楽しみにして。

『できた…っと。』

仕上がった浴衣や甚兵衛を綺麗にたたみ、祭りの朝に皆へ届けよう。
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