第9章 ただ、君をー鶴丸国永ー (裏)
ー鶴丸国永ー
「邪魔するぜ、主。」
『ん?どうしたの、鶴丸。』
「いやなに、真面目に仕事してるかと思ってな。」
それは、口実。
主が他の奴に絡まれてないか、見に来たんだ。
『鶴丸じゃないんだから、やってるよー。』
そんな俺の気持ちを知らずに、優しい笑顔で迎え入れてくれる。
これが俺だけになら安心できるのだが、誰にでもだから心配になる。
「どれどれ?」
確認するふりをして、主に近づく。
そして、後悔した。
ふわりと主から流れてくる甘い香りに、胸が高鳴る。
『ほら、ちゃんと仕事してるでしょ?』
と、俺を覗き込む澄んだ瞳。
あぁ…今すぐに抱きしめたい。
『鶴丸?』
抱き締めたら、どんな心地だろうか。
触れたら、どんな声を聴かせてくれる?
『鶴丸ってば。どうかしたの?』
いかん、妄想が…
「いや、なんでも。
そういや主は、好きな奴はいるのか?」
『なによ、唐突に…。』
お。
若干、引かれているな。
だが、ここで負けるか。
「主も年頃だろ?
そういうのは、どうなのかと思ってな。」
『…年増と言いたいのか?』
「違うって。
恋バナだよ、恋バナ。
俺としてみないか?」
『女子か。』
「いいだろ?
なぁ、どうなんだ?
夜の方は?」
『訂正する。
女子じゃなくて、オヤジだ。
セクハラ・オヤジ。』
「なんだと!?
こんないい男を捕まえて。」
『いや、捕まえてないし。
何より、仕事中だよ。』
「なー、どうなんだ?」
半ば意地になって、しつこく聞いた。
…後悔する事になるとも知らずに。
『審神者になる前に、そういう人はいた。』
ー!!
『もちろん、生娘じゃない。
…これで満足?
さ、鶴丸も内番に戻りなさい。』
「あっ、あぁ…。」
自分が思っていた以上のダメージに、フラフラと部屋から出た。
…そうか。
想い合った人が居たのか…
あの器量だし?頭の回転だって早い。
魅力溢れる主だ、男が放っておくはずない。
わかっていた。
わかっていたが…
自分で思っていた以上に、主の事を好いていたんだな…
結構なショックだ。
伽羅「…どうした?」
「伽羅坊…いや、なんでも」
伽羅「なさそうだから、聞いている。」
だよなぁ。
伽羅坊、馴れ合うつもりはないと言いながらも気にかけてくれてるもんな。
「実は…。」
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