第1章 神宮祭りの舞姫
自宅前で、なぜか鬼の匂いがした。
しかも結構強そうな鬼。
一度鬼に襲われたとき、わたしを助けてくれた鬼狩り様が教えてくれたんだけど、
鬼は太陽の光が致命的らしく夜に行動するとのこと。
そして、弱い鬼ほど理性が乏しく貪るように無差別に人を喰らうのだと。
そういうこともあって、ここに来たのは周囲に気づかれもせず襲ってもいないと言うことは、かなり理性の利く強い鬼だと思った。
同業者の人たちは皆、仕事の時間は大抵夜になるため鬼が出ると言う噂を信じている。
そのため夕方日没前に仕事に向かって夜が明けるまで仮眠してから自宅に帰るのが常。
それでも鬼への被害も数年に一度は聞いたことがあった。
わたしはなんだかんだで命拾いをしてるんだと思いながら、どうせ夜は家にいないんだしと楽観的に考えていた。
「でもどうしてわたしの家に?何をしようとしていたのでしょう。」
モノも取られていなければ家の戸を開けた形跡すらない。
近隣の人たちも何もされたわけでもなければ、鬼の被害や、そういう噂を聞いたこともない。
いつもの様に皆がそれぞれの生活を送っている。
今日も何もかもがいつも通りだ。