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極楽浄土【鬼滅の刃/童磨】

第11章 浄土と氷獄




全てが終わり、童磨がその場を去った後、

彼の襲来が終わりを知らせるように氷と瓦礫の要塞は脆く崩れて、過去の栄光の跡形もなく屋敷は瓦礫の山と化した。

鶴之丞が前日、警戒して要請した鬼殺隊が駆けつけたのは、無情にも住民が「酷い音がした」と騒ぎ立てた後だった。









「こ…これは…」


中に調査に入った隊員が背筋を凍らせた。

屋敷の端の方、居間だったらしい場所で、一人の変死体が転がっているのを発見したのだ。

それは、氷の蓮の彫刻の名残を微かに纏った、見るもおぞましい凍死体だった。


「凍死…」
「しかも、この様子だと体の内と外から急激に凍らされたみたいですね」


そこで、屋敷の外を調査していた隊員の声が響く。


「柱、こちらにも遺体が!」
「なんだと!今行く」


柱と呼ばれた者が駆けつけると、倉庫があったらしいそこでは男が二人、遺体となってそこにあった。


「こちらは、恐らく毒殺のようです」
「おかしいですよ。明らかにこれは鬼の仕業ですし、鬼の気配も色濃く残っています。しかも、これって…」
「おそらく上弦だな」


柱と話していた隊員は一瞬にして恐怖に身をこわばらせる。

すると、冷静に調査を続ける隊員が先ほど言いかけられた言葉の続きを口にした。


「人を食ったり吸収した痕跡が一つもありませんね…」
「妙だな…」


柱は、凍死体と毒殺死体の、綺麗すぎる死に様に強い違和感を覚えた。この規模の鬼が、ただ人を殺して建物を破壊するだけなど、考えられない。


「この屋敷には、監禁されていた女性がいたという情報がある。その女性の遺体もない。

もしかすると、鬼はその女性を攫ったか、あるいは鬼の協力者が事前に連れ出したか…」

柱の言葉は、事件の裏側にある因果、そして童磨の特異な動機を示唆していたが、隊員たちには理解しがたい、不可解な謎として残るしかなかった。







調査の結果、この件は、上弦の鬼による特異な襲撃事件として処理され、被害者である鶴之丞が鬼殺隊に接触していた事実は機密情報として封印された。

しかし、鬼殺隊内部では、

「鬼がなぜ、人間を殺し、建物を破壊しただけで、捕食もせずに去ったのか」

という疑問が、華雅流の因果と共に、長い間、深く燻り続けることとなる。













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