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極楽浄土【鬼滅の刃/童磨】

第10章 凍土の胎動



「20年以上前の事件も、見方を変えれば、先々代が殺されたということも、こう考えられる。
妾として迎え入れていた女性を何らかの理由消そうとして、女性がそれを知り、逃げ隠れたのが、その”人ならざる者”のところであれば、その者は匿い守るために先々代を殺したのではと…」

静代は、静かに頷いた。

「そうでしょう…。たしか、彼女は数日体調がよろしくなかったと…。それが”身ごもっているのではないか”という噂もありました」

静代の瞳には、過去の悲劇と、それが今、愛弟子に繰り返されているという戦慄が宿った。

鶴之丞の血筋が、人外の者に二代に渡って因縁をつけられている。そして、菖蒲は、その因縁の渦の中心に立たされている。

「……その人物に、頼んでいただけるのですか?」

静代は、躊躇よりも決意を滲ませた声で問い返した。流派の体面など、もはやどうでもいい。

むしろ、愛弟子であり、娘同然に育ててきた子が、こんなにも過酷な状況にあることに気づきもしなかったこと。
そして、どんなに辛くても心配させまいと気丈に振る舞っていた菖蒲に、身が避けるほど心を痛めた。

「勿論だ。静代殿も助けたいと思えばわたしも動こうと思っていたところでね…」

「その方のお名前は?」




「その人物とは、万世極楽教の教祖、童磨という者でございます」




「先ほど申してきたように、彼とは個人的な繋がりがあってね。この異常な状況を打破できるのは、彼しかいないと思うんだ…」


静代は驚愕に目を見開いた。

万世極楽教という名まで知り得なかったが、山奥に異様な宗教施設があり、そこに逃げ込んだ女性の噂話などが静代の耳にも届いていたからだ。

よくよく考えれば、その山は先々代の遺体が発見された場所であり、後を追いかけていった幼き鶴之丞が納屋で発見されたのもその麓である。

家元と性格まで瓜二つだった先々代の様子からも、妾の女性を助けたのだと推測するに、菖蒲が心を許したとなれば信用していいのかもしれない。

「お話、承知いたしました。
実田様、すぐにでも、直談判できませんでしょうか。
そして、あとは屋敷の内部の様子です。
蔵の状態、鶴之丞殿の帰宅時間、見張りの有無……誰か、中の者に様子を探らせることはできませんでしょうか」
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