第22章 呪い合い、殺し合い、
「!?」
なずなはまだ間合いの外におり、攻撃も仕掛けていない。
一体何が……?
レジィが衝撃の抜けた方に目を向けると、白と黒の毛が入り混じり、額に模様のある大きな犬。
上顎には包丁が刺さった痕がくっきり残っている。
最初に見た犬の式神だ。
傷つけた後はもう使えないと思っていた。
たとえあのガキの術式が回復したとしても一番厄介なこの式神だけは使えないと。
そんなレジィの考えを読んだかのように伏黒が口を開いた。
「玉犬はあの程度で動けなくなるほどヤワじゃない」
「……呪術師は嘘ついてなんぼ……か」
待っていたんだな……
犬のカードが俺の想定から完全に消えるまで……!
「一芸の式神、領域、犬のカードはなくしたと思わせて伏せておき、俺の意識を小娘の方に向かせる」
渾に噛まれたレジィはゆっくり倒れ、もう起き上がれなかった。
左肩の傷が深い。
鎖骨は噛み砕かれ、肺も傷ついている。
「やっぱり総合体育館に逃げ込んだんじゃなく誘ったんだな。現代の術師、しかもこんなガキに出し抜かれるとはね」
「逃げたくても鵺は人を乗せて長くは飛べない。前にそれで苦労したからな。オマエ、天元様とはどういう関係だ?」
「テンゲン?……あぁそっか、そりゃ生きてるかあの引きこもり」
「……そうか、もういい」