第20章 10月31日 渋谷にて
「穿血!」
虎杖の予測通り、穿血が眉間へ真っ直ぐ向かってくる。
足がつくと同時に膝から上体を落とし、額を掠めたのも気にせず、脹相との距離を一気に詰める。
それに合わせて脹相も穿血の軌道を変えてきた。
が、それも初速よりだいぶ遅くなっており、容易に避けられた。
やっぱりだ。
この技が速いのは最初だけ!
一度避ければ軌道を流されても詰められる。
このまま肉薄し、殴り合いに持ち込もうとする虎杖だったが、そこへ焦りの色が全く見えない脹相の硬い声。
「超新星」
いつの間にか虎杖の背後に移動していた脹相の血の玉が爆ぜた。
「痛ッ……!」
全方位に散弾のように飛び散ったそれをまともに背中に食らってしまい、息が詰まった。
一瞬動きの止まった虎杖の足目掛けて脹相が血刃を振るう。
まずは右足を突き刺し、続いて左足を床に縫い止めようとするが、虎杖は刺された足で押し返し、両手を床につくと、左の踵を脹相の頬に入れる。
穿血の前段階である血の玉を作らせる余裕を与えない、それが最優先だ。
足の傷に構わず虎杖が踏み込む。
すると、脹相が両手を合わせこちらに向けてきた。
「げっ!」
玉なしでも撃てんのか!?
いやまだ残って……
しかし、穿血は飛んで来ず、代わりに拳が腹に重く入った。
フェイントかよ!!
「赤鱗躍動」
ズズズと脹相の顔の紋様が広がっていき、スピードを増した一撃が虎杖の喉に、続いて足払い、体勢を崩したところへ右頬に掌底をぶつけ、壁に叩きつける。
「百斂・穿血」