第20章 10月31日 渋谷にて
「オマエに聞きたいことがある」
虎杖の思惑も知らず、おもむろに脹相が尋ねてきた。
「弟は最期に何か言い遺したか?」
「弟……?」
「チッ、オマエ達が殺した2人の話だ」
「……!」
虎杖の脳裏に八十八橋で戦った兄弟が蘇る。
「……別に、何も……」
言葉はなく、殺された弟を見てただただ涙を流していた。
「……でも、泣いてたよ」
虎杖が心臓を貫く直前、トラックの荷台に乗って逃亡しようとした時もその目は死んだ弟の方を向いていた。
悲痛な表情を浮かべる虎杖とは対照的に脹相は眉を吊り上げて睨むと、顔の中心を横切る紋様も粟立つように伸びていく。
「壊相!血塗!見ていろ!!」
これがオマエ達のお兄ちゃんだ!!
脹相から呪力が立ち昇り、それが血液に変換されていく。
両手を合わせた脹相の周囲には3つの血の玉が浮遊している。
更に手の中にもあるので、4発分。
中・遠距離タイプかと思いきや、身体能力も高いようで、また離されてしまい、虎杖の思うようには戦えない。
クソッ、また距離を取らされちまった。
あの血のビームは速すぎる。
回避率は五分、勘が外れて頭にでも食らえば死ぬ……!
……なら、せめて、
発射のタイミングはこっちで決めさせてもらう。
軽く跳び、地面から両脚が浮く。
足がついてなければ回避動作は限られてくる。
相手はそこを狙うはず。