第20章 10月31日 渋谷にて
22:10―
渋谷駅構内へ入った虎杖は中の様子がメカ丸から聞いていたものと違い、戸惑っていた。
それでも速度は落とさず、B5Fを目指して改札を飛び越え、下へ降りていく。
コッチで合ってるよな……?
人が全然いねぇ……!
駅の中に大勢閉じ込められてたんじゃなかったのか!?
駅前と同じように改造人間に襲われたのなら、あちこちに血痕があってもおかしくないはずだが不自然なくらい何の形跡もない。
それに改造人間も全くいない。
疑問に思いながら階段の手すりを滑り降りると、その先に1人の男が立っていた。
鼻から両頬にかけて一文字の紋様があり、あちこちにハネている髪を後ろで二つ結びにした法衣姿の男。
呪霊ではなさそうだが、人間というにも気配に違和感がある。
一方、向き合った男、脹相は虎杖の顔を見るや戦闘体勢だ。
虎杖 悠仁、
弟の仇……!!
赤血操術「百斂」
手の中で血液を圧縮し、虎杖に向けてパシッと両手を合わせる。
「穿血!!」
呪力で強化された血液が音速を超えるスピードで一直線に発射された。
反射的に腕を交差させ、かろうじてそれを受けた虎杖だったが、穿血の威力に押されてどんどん後退していく。
ヤバイ……!
腕を貫かれる!
「ッあ!!」
なんとか上半身を捻って穿血の軌道から逃げ、二撃目の穿血も身を伏せて避けながら、脹相との距離を詰める。
またも血液を圧縮しようとしている脹相に肉薄し、打撃を入れた瞬間、穿血をまともに受け負傷した左腕に激痛が走った。
いつもの打撃ではない、打撃に呪力が追いついていなかった。
さっき出たのは逕庭拳だ。
交流会で東堂に悪癖と指摘され、黒閃発動以降は直っていたはずだったが、傷が深くて無意識の内に呪力操作がうまくいかなかった。
血が止まらない左腕に目を落とし、歯噛みする。
痛みは来ると分かっていれば我慢できるが、それ以前にもう思うように動かねぇ。
……だからこそ左でも攻める。