第20章 10月31日 渋谷にて
まずい、このままじゃ2人とも斬り殺される。
多分、新田ちゃんは勝手に動き回るあの呪具に不意をつかれたんだ。
回れ口!
少しでも時間を稼げ!
正直、口も満足に動くとはいえなかったが、脳震盪から回復するまでなんとかしなければならない。
「テメェらは何がしてぇんだよ?」
「あー、なんか五条悟封印したいんだって」
「!!」
封印!?
五条はまんまと誘い出されたってこと!?
……いや、それが目的ならこんな所で補助監督を襲っている意味が分からない。
「テメェに聞いてんだよ」
「あっ俺?うーん……例えばサッカー大好きで大得意の人がさ、サッカーのない世界に生まれたらどうするかな?」
「……ダメだ、上手く言えないなぁ。っていうか理由ってそんなに大事?」
重面が下卑た笑顔を浮かべる。
「いーじゃん、いーじゃん、楽しいじゃん。俺が楽しければそれでいいじゃん!」
そして、傍らに倒れた新田を更に切りつける。
「君もそう思わない?」
「やめろ!!」
「やめさせてよぉ〜」
重面は相変わらずふざけた調子だ。
「俺にこれ以上罪をキャっ、噛んじゃった」
咳払いする重面を鋭く睨み、なんとか野薔薇も立ち上がる。
しかしその足元は覚束ない。
「フラッフラじゃん」
重面は剣を、野薔薇は金槌を振りかぶる。
と、近くでガラスの割れる音がした。
ガラスを踏む足音の方を向くと、向こうから誰かが歩いてきている。
「いいんだっけ、黒じゃないスーツを殺しても」
野薔薇も目を見張っていた。
確か、伏黒と一緒に渋谷に来ていた……
「七海さん……?」