第20章 10月31日 渋谷にて
野薔薇が疑問符を浮かべていると、重面はいきなり方向転換してブンカムラへ走り出した。
野薔薇も急いで後を追う。
建物内に入ると、そこには血を流して呻く新田の姿が。
「新田ちゃん!?」
前を行く重面が走る勢いのまま、負傷した新田を蹴りつけた。
「テメェ!!」
重面が振り向き、見せつけるようにいやらしく笑っていると、天井から落ちてきた剣がその手に収まった。
柄が手になっている特徴的な形状。
先程野薔薇が外で叩き落としたはずの呪具だ。
は!?
さっき落とした剣!
……がなんで上から!?
その一瞬の混乱を見逃さず、重面は呪具を振り抜いた。
野薔薇の太腿を浅く切られる。
浅いからまだ大丈夫、動けると思ったら、今度は顎に衝撃。
剣の柄になっている手に殴られた。
強烈に殴打されたわけではなかったが、こちらは入りどころが悪かった。
脳震盪を起こして膝をついてしまう。
コイツ、いいとこ当てやがる!
「おっ、顎入った?立てない?」
有利を悟った重面が野薔薇の前にしゃがみ込む。
「ねぇ立てない?ねぇってば」
野薔薇の顔を覗き込みながらニヤニヤと笑っている。
「君さ、前に会った時より凄く強くなったでしょ?俺、最初気づかなかったもん。……でもさぁ、ただ強いだけで勝てる世界じゃないんだよ。特に俺の術式が絡むとね」
野薔薇を殴った剣が重面の手にピョンと戻ってくる。
「つっても、俺も自分の術式のことよく分かってないんだけど……さて、どっちから殺そうかな?」