第20章 10月31日 渋谷にて
21:30 渋谷マークシティレストランアベニュー入口
新田は1人、帳の外へ出て伊地知から指示を受けていたが、突然電話口から息を詰まらせるような音と伊地知ではない誰かの声。
続いて端末が落ちて地面にぶつかったような衝撃音がしてにわかに焦り始めていた。
「ちょ、伊地知さん?どうしたんスか!?」
問いかけても返事がない。
それに先程聞こえたのも聞き慣れない声だった。
帳の外に呪詛師がいる……?
だとしたら、連絡網確立のために帳外で動いている補助監督や窓が危ない。
司令塔となる伊地知がいなくては連絡網自体も機能不全となる可能性も考えると、まずは伊地知の安否確認だろうか。
だが、自分1人で行っても呪詛師がいたら手も足も出ない。
……戦力を分散させるのは望ましくないが、誰かについてきてもらった方がいい。
そう判断した新田は真希達が改造人間と戦っている帳の中に入っていった。
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渋谷マークシティ内では、一般人を一ヶ所に避難させ、真希と野薔薇となずなが改造人間を倒していた。
真希となずなは接近戦を仕掛けていて、新田が近づくとそれこそ危険なため、少し距離を空けて戦う野薔薇の元へ走る。
「釘崎さん!」
「新田ちゃん!?ここ危ないわよ!」
「分かってるっス。でもそれどころじゃなくて……!」
そして新田は伊地知との通話時に起こったことを話した。
「……何ソレ、ヤバいじゃん」
事情を聞き終えた野薔薇は目を見張っていた。
「はい、もし呪詛師がいたら私ではどうしようもないので、どなたか一緒に来てほしいっス」
「そうね、真希さんとなずなにも話して、誰が行くか決めましょ」