第20章 10月31日 渋谷にて
粟坂を囲んでいた無数の兎が一斉に影となって消えた。
「いねぇ!逃げたのか!?」
驚愕する粟坂の頭上に大きな影。
脱兎を解いた伏黒が満象と共に落ちてきたのだ。
満象の重みで道路のアスファルトが砕けるが、下敷きになった粟坂は無事。
「はっはっは、なんじゃあこりゃ!」
すぐに満象を解き、伏黒自身はフェンスの上に着地する。
「出したり消したり、忙しない。男ならハッキリしろい!!」
「そういうのは俺の担当じゃない」
すっと指差した瞬間、横から粟坂を襲う衝撃。
突如ぶつかってきたのは自動車だった。
しかも走ってきた自動車ではなく、エンジンのかかっていない車の背面部分。
虎杖が停まっていた車を投げつけたのだ。
このガキ!
さっきからなんてパワーだ、ヒヤヒヤさせる。
車を後ろに退かし、向かってくる伏黒の呪具を防御しつつ、小刀を振り抜く。
いい反射で避けられた。
こっちもエンジンかかってきたな!
良し良し、
虎杖の方もこちらに接近してくるのを見てほくそ笑む。
粟坂はこの必死の一撃を待っていた。
これを“あべこべ”で受けてカウンターを入れる。
カウンターを躱せた者はいない!
粟坂が術式を発動した直後、
「!?」
意識外の場所、右腹に重い一撃が。
ぶわりと脂汗が噴き出す。