第20章 10月31日 渋谷にて
2人がかりで更に畳みかけるが、相変わらずだった。
こちらの攻撃の方が多く入っているはずなのに、押し込めない。
こちら側だけどんどん疲労が蓄積していくようだ。
「マジでなんなんだよ、コイツ!タフとかいうレベルじゃねーぞ!?」
「……」
痺れを切らす虎杖の隣で伏黒は口を引き結んで考えていた。
十中八九奴の術式がからんでる。
攻撃の無効化?
いや……
ふと伏黒の脳内に五条のふざけた顔がよぎる。
「オイ!五条悟が渋谷に来てる!さっさと帳の基を置いて逃げたらどうだ!!」
「くっくっくっ、ハッタリが下手だな。『五条は封印された』オマエ達がデカイ声で言ったんだぜ。……つーか、だから俺達呪詛師がハシャいでんだろ。五条が元気なら寝てるわ」
やっぱりそうだ。
コイツは五条先生には勝てない。
だからコイツの術式は“無効化”なんて大層なもんじゃない。
「……伏黒、嘘下手ね」
伏黒が真剣に考察しているとは露とも知らず、虎杖がその肩をポンと叩いた。
「どんまい」
「うるせぇ」
「やる気がないなら、そろそろ殺すが?」
ニヤリと笑った粟坂の額の左側、先程伏黒が呪具の柄で叩いたところだけわずかに打身になっている。
攻撃が全く効いていないわけじゃない。
格段に効きが悪いだけだ。
「来るぞ!」
伏黒が兎の影絵を作る。
「脱兎」
すると足元からおびただしい数の兎が出てくる。
それらに攻撃能力はなく、撹乱用だ。
粟坂を囲み、その出方を窺う間にもどんどん数が増えていく。
しかし、粟坂は出てこなかった。
それどころか、肩にぶつかった兎に少しよろめいている。
それを伏黒は見逃さず、虎杖のフードを引っ張った。
「一旦退がれ」
「おっ?」
「奴の術式が分かった」
「おぉ!!」