第20章 10月31日 渋谷にて
虎杖の容赦ない拳が粟坂の鳩尾に入った。
それを合図に渾と伏黒も距離を詰め、先行した渾が上から粟坂の頭を狙って爪を立てる。
畳みかけるように虎杖と伏黒がそれぞれ拳と斬撃を見舞った。
別に連携するのが初めてというわけではなかったが、虎杖の素早さを考慮しながら立ち回るのは、伏黒でも骨が折れる。
どの攻撃も確実に入ったはずだが、三連撃を喰らっても粟坂は目立った負傷はしていない。
「……フム」
そして懐から小刀を抜き、虎杖を切りつけた。
後ろへ跳んだ虎杖は避けきれなかったのか、脇腹から少し出血している。
「虎杖!!」
伏黒がすぐさま蝦蟇を使って粟坂を捕まえ、近くの連絡橋に叩きつけた。
フォローできるようにと駆け寄る伏黒に、虎杖は問題ないと笑ってみせる。
すぐに敵の方へ視線を移す。
連絡通路の窓が割れるほどの力で叩きつけたのに、粟坂は何事もなかったかのようにガラス片を払って出てきた。
「元気元気、将来有望、殺し甲斐がある」
その無傷な様子を見て伏黒が眉根を寄せる。
「玉犬の爪は特級にも効く」
「俺だって本気で殴った」
じゃあなんでダメージがねぇんだよ……!
ここまで攻撃が通じないとなると、さすがに2人にも焦りが出てくる。
「時間、かかんねぇんじゃなかったか?」
「……ノーコメントで」