第20章 10月31日 渋谷にて
粟坂をワイヤーに絡め、虎杖はタワー屋上から躊躇なく飛び降りる。
「伏黒!鵺を解け!!」
そして自らも呪力でワイヤーを切り、階下の窓を割って室内へ退避。
粟坂はそのまま地上に落下していった。
さすがにこの高さでは自由落下して後を追うわけにもいかないため、階段を使うことにする。
が、
「こんなとこにもいんのかよ!?」
階段を下りていくと、あちこちに改造人間がいた。
放っておくのも気が引けるが、全フロアを見て回る余裕はない。
とりあえず進行方向にいる改造人間だけ倒しながら地上を目指す。
虎杖がビルを出るとすぐに伏黒を発見した。
「アイツは?」
「そこだ」
伏黒の視線の先、粟坂は道路の真ん中に倒れて動かないが、少し妙だ。
血が一滴も出ておらず、かすり傷ひとつない。
「俺は接地の瞬間を見てない」
粟坂から視線を外さずに伏黒がつぶやく。
「死体がキレイすぎる。術師といえど地上41階からの落下だぞ」
いくら術師は呪力で肉体を強化できるといっても限度はある。
あの高さから落ちれば、ひとたまりもないはず。
何かタネがある。
そう確信した伏黒が影絵を作りながら、動かない粟坂を睨む。
「起きろ、たぬきジジィ!!」
すると、予想通り粟坂はムクリと起き上がってきた。
「まったく、若者は年寄りを労らんかい」
傷ひとつない状態でワイヤーを解いてくる。
タワーから落ちてきた時は気づかなかったが、その腹巻に帳の基が2本差し込まれているのを見て、伏黒はいち早く事態を察した。
「時間はかけらんねぇぞ」
「かかんねぇだろ」
伏黒に返答した虎杖が粟坂に向かって一歩踏み込んだ。