第20章 10月31日 渋谷にて
22:01 渋谷Cタワー
粟坂は屋上から眼下を眺めていた。
「術師は気づくかな……この帳の中ではここが一番目立つよな?」
「多分ね」
若い男が答える。
「でも、気づいた所で、だよ」
「まぁな、下層には例の改造人間がウジャウジャいる。すぐには上がってこれねぇだろうな」
そんな会話をしていると、2人の背後に大きな鳥が飛来した。
鵺が外から屋上まで飛んできたのだ。
その背から猪野と虎杖が屋上に飛び降りる。
虎杖は鵺の脚に結んだワイヤーを使って呪詛師達を絡め取り、その間に猪野は帳の基へ走る。
ここまではプラン通り。
しかし、猪野は帳の基を前に驚愕して立ち止まってしまった。
帳の基の傍にはもう2つ、釘を打ち込んだような跡があるのだ。
3本あったのか!?
残っていた基を蹴り折る。
……が、帳は上がらない。
あと2本はどこに?
周囲に視線を走らせるとワイヤーに絡め取られただるま顔の男の手に2本ある。
アイツに持ち去られていた!
しかし距離が開きすぎていて猪野では届かず、タワーの下に落ちていく。
あちらは後輩達に任せた方が良さそうだ。
「孫よ」
「うん、分かってるよ、婆ちゃん」
こっちは残った婆さんと男の2人を撃退する。
猪野は頭を切り替え、目出し帽を深く被った。
「カワイイ後輩もできたことだし、ここいらで活躍して、ボチボチ俺も一級術師になっちゃうぞ」