第20章 10月31日 渋谷にて
「相当強固な帳ですね。どこか脆い所を探して、一瞬でもいいから穴をあけないと……中に入らないことには始まらない」
猪野の懸念を伏黒が的確に言い当てる。
まだ周辺に少し残った改造人間を渾と共に倒していた虎杖もすぐ戻ってきた。
「なんで?」
「なんでって……」
虎杖の質問に猪野は肩をすくめるが、そういえばこの後輩は呪術界に入って日が浅いんだっけか、と思い直す。
「いいか、これは術師を入れない帳、つまりバリアなんだよ。バリアってのは自分を守るために囲うもんだろ?こういう場合、原則として帳を降ろしてる奴は帳の中にいるんだよ」
「でも、原宿ではさ、帳の外に基があって、それを呪霊が守ってたよ?」
そう言ってポケットから取り出したのは、壊した帳の基。
「これが帳の基……?」
猪野は呪符をグルグル巻きにした楔を手に取り、しげしげと観察する。
「うん、冥さんが言うには、もうそれには結界術が組み込まれてて、後は誰かが呪力を込めればいいだけなんじゃないかって」
「ってことは、それさえ破壊すれば呪詛師は後回しでいいってことですよね」
虎杖の話を踏まえて伏黒が提案する。
当然、呪詛師は帳の基を守ろうとするだろうが、こちらは3人だ。
2人が呪詛師の足止め、残る1人が帳の基をいち早く壊せば、他の術師は渋谷駅に攻め込める。
「帳で自身を囲わずに外に出ることで、発見、撃退されるリスクを上げて、帳の強度も上げる……コロンブスの卵というか、いやでも結界術の基本ガン無視してんじゃねーか!とんでもねぇ奴だな!」
「……その理屈なら、帳の基はかなり目立つ所にあるんじゃないですか?」
「より見つかるリスクを抱えて、更に強度を上げてるってわけか」
確かにそれなら先程虎杖の打撃でも帳が割れなかったことにも納得がいく。
「目立つ、場所……」
自ずと全員の目が上を向いた。