第20章 10月31日 渋谷にて
21:27―
地上に出た虎杖は渋谷駅に向かって全速力で走っていた。
「虎杖!いいニュースダ!!」
B5Fの様子を別の傀儡を通して偵察していたメカ丸が大きな声で知らせる。
「奴ら、封印した五条ヲB5Fから動かせなイ!」
「なんで!?」
「五条悟だからダ!」
「ハハッ、納得」
全くもって不合理な理屈だが、呪術師最強を知る者からすれば非常に説得力のある答えだ。
「包囲網を作るゾ!渋谷駅の各地下鉄路線の隣駅から術師を向かわせロ。術師を入れない帳が上がり次第突入ダ!!」
渋谷駅に地下から乗り入れているのは、半蔵門線 表参道駅、副都心線 明治神宮前駅、田園都市線 池尻大橋駅、東横線 代官山駅。
この4路線から渋谷駅へ突入する。
しかし、その包囲網を完成させるには大きな問題があった。
「向かわせろったって、伊地知さんと連絡つかねぇし……あ!」
「何ダ!!」
青山霊園に待機している時、冥冥に渋谷に来ている術師を聞いていたのを思い出して、あることを閃いた。
そして中では電波が断たれているにもかかわらず、迷わず渋谷駅に降りた帳に入っていく。
中に入って目に飛び込んできたのは、改造人間が一般人に襲い掛かっている光景。
帳の外に出られない人々は逃げ惑っている。
1、2と目で数えながら、走る勢いそのまま視界に入っていた4体を倒した。
なるべく痛みを感じないように一撃で確実に息の根を止める。
と、目前のビルから巨大な改造人間が出てきた。
容赦なく蹴りを入れてその顎を砕く。
そしてビルの壁を伝って一気に屋上まで登り、大きく息を吸った。
「ナ ナ ミーン!!!ナナミンいるー!??」
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ハッキリと聞こえた声にまず七海がピタリと立ち止まり、伏黒は虎杖の声に、猪野は“ナナミン”という単語に反応して思わず七海を見た。
虎杖の大声はまだ続いている。
「五条先生が封印されたんだけどーっ!!」
虎杖が任務中にこんな冗談を言う性格ではないことを知っている七海、伏黒は瞠目した。
「封印!?」
「2人共、予定変更です。すぐに虎杖君と合流します」
七海は迷わず声がした方角に歩き出す。
「もし封印が本当なら終わりです。この国の人間全て」