第20章 10月31日 渋谷にて
少し遅れて目を覚ました漏瑚と脹相はまだ眠そうにしていた。
一瞬にも満たない時間でここまでやるとは本当に規格外だ。
それももう封印したので心配無用だが。
「全員起きたね。さて、今後の……」
夏油の手の中の獄門疆がカタカタと揺れ、不審に思って目を落とす。
「どうした?」
途端、獄門疆はズシリと重さを増し、床へと落ちた。
ホームの床に亀裂を入れ、陥没させるほどの重量。
獄門疆の表面で閉じていた無数の眼が半開きになっている。
「ッ!なんて奴!!」
異常を知らせるソレに夏油は瞠目した。
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真っ暗闇の中、五条は無数の黒い骸骨に囲まれていた。
骸骨達は五条に手を伸ばそうとしているが、触れられないようだ。
「物理的時間は流れてないっぽいね……しっかしまずったよなぁ、色々とヤバいよなぁ」
アイマスクで目を覆いながらそう呟くが、五条に焦りはない。
「……ま、なんとかなるか」
真っ先に頭に浮かんだのは渋谷に派遣されている生徒達だった。
昨年の百鬼夜行を経験し、当時呪詛師となっていた傑を退けた2年生。
まだまだ浅い経験の中、2人が黒閃を発動し、1人が領域展開、もう1人は簡易領域を会得しつつある1年生。
皆、手塩にかけて育てた優秀な術師だ。
獄門疆の中、外に出ることが叶わない絶望的な状況でもその信頼は揺るがない。
「期待してるよ、皆」