第20章 10月31日 渋谷にて
あちこちに高度な帳が降ろされ、その上分からないことだらけとあれば慎重になるべきだろう。
「呪詛師は無視して先に進もう。まずは五条君の安否確認だ」
「駄目ダ!もう渋谷の状況は変わっていル。相手の結界術はコチラの数段上手ダ。今、渋谷には4枚の帳が降りていル」
五条が誘い出された副都心線ホームを中心に一般人を閉じ込める帳、五条を閉じ込める帳、術師を入れない帳。
更に外側にもう1枚、19:00時点で降ろされている一般人を閉じ込める帳だ。
「……この線路の先も術師を入れない帳で塞がれていると」
「そうダ。既に待機していた術師達は帳の中だろウ、帳の内側では携帯は使えなイ」
「それだけじゃないみたいだ。帳外にいるはずの補助監督とも繋がらない」
何人かの補助監督に電話してみたが、いずれも不通だった。
「頼む、俺の指示に従ってくレ。俺のこの保険もすぐ消えてしまウ」
「冥さん」
虎杖からも頼み込む。
「分かった、言ってごらん」
「虎杖は明治神宮前に戻り、地上から渋谷に向かってくレ。五条封印を術師全体に伝達、五条奪還をコチラの共通目的に据えロ」
「応!」
「冥冥は虎杖が抜ける隙を作ってくレ。呪詛師撃退後はとりあえずこの線路を押さえておいてほしい。だがまだ相手の出方が分からン」
「臨機応変ね。ところで君の口座はまだ凍結されてないね?」
「……エ?」
「五条悟が消えれば呪術界も人間社会もひっくり返る。すまないが、命懸けで頼ム」
そう言ってメカ丸は自嘲する。
それでもいいと思っていたんだが……
我ながら最低だな。
と、今はそんな時間すら惜しい。
唯一指示を受けていない憂憂がメカ丸に尋ねる。
「僕は?」
「好きな方につケ」
「じゃあ姉様!」
元気よく返事したところで、近づいてくる気配の主が見えてきた。
「皆、来たよ」
姿を見せたのは、いずれも鎖を巻いた呪詛師。
人型であるものの、姿形は異形だ。
「冥冥だな?」
成程、こちらの情報もある程度は持っているということか。
さて、術式、戦い方、弱点がどの程度知られているのか……
冥冥は重さを感じさせない動きで巨大な斧を構え、虎杖に指示を出す。
「好きに動いていいよ。合わせるから」
「押忍!」