第20章 10月31日 渋谷にて
“開門”の言霊に反応し、五条の足元に置かれた獄門疆が四方に割れ、中から肉に包まれた大きな目玉が現れる。
その異様な呪力を六眼は瞬時に捉え、五条は踵を返そうとするが……
「や、悟、久しいね」
「は?」
聞き慣れた、しかしもう聞くことはないと思っていた声に驚いて振り向く。
そこにいたのは、昨年自らの手で殺した親友。
偽物?
変身の術式?
その全ての可能性を六眼が否定する。
……本物……!
そして五条の頭の中にとめどなく溢れ出す3年間の青い春。
刹那、だが彼の脳内では1分などとうに過ぎていた。
大きな目玉がふつりと消えると同時に生々しい音を立てて肉の縄が五条を縛り上げる。
っ、やられた!?
「駄目じゃないか、悟。戦闘中に考え事なんて」
そう言って笑う夏油に強烈な違和感を感じながら、五条は自分の置かれた状況を素早く分析する。
呪力が感じられない、
身体に力も入らん……
詰みか……?
「……で、誰だよ、オマエ」
「夏油傑だよ。忘れたのかい?悲しいね」
「……肉体も呪力も、この六眼に映る情報は、オマエを夏油傑だと言っている」
口調も立ち居振る舞いも彼に酷似している。
しかし、それは1年前に失ったのだ。
あの時、確実に殺した、完全に命が絶たれたことを確かめたのは自分自身だ。
ならば、目の前のモノは親友の肉体を弄んでいる何者か。
腹の底から湧き上がる激情に任せて五条は吼えた。
「だが、俺の魂がそれを否定してんだよ、さっさと答えろ!オマエは誰だ!!」