第20章 10月31日 渋谷にて
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「獄門疆は生きた結界、源信の成れ果て。獄門疆に封印できないモノはない」
今少し時を遡り、夏油と呪霊達が麻雀に興じていた時のこと。
漏瑚が牌を取捨しながら、夏油に尋ねる。
「だが、さすがに封印条件はあるのであろう?」
「1分だ」
「は?」
「獄門疆開門後、封印有効範囲 半径約4m以内に1分間五条悟を留めなければならない」
「おい」
パチリ、パチリと静かな音がする中、漏瑚がその手を止めた。
「焼き殺すぞ」
感情に任せて牌の山を崩す。
「よもや、その無理難題を押しつけるために手を組んだのではあるまいな?その条件下でアレの1分……蒙昧な人間共、その一生を幾千積み重ねても釣り合わんぞ」
獄門疆を中心とした半径4mの範囲に1分間五条を留め置くなど不可能だ。
まず獄門疆の近くに追い込むことも難しい上、1分足止めする間に自分達は祓われ、五条に逃げられる。
ならば獄門疆を五条にバレないよう設置するしかないが、相手は六眼持ち。
どこへどう隠したって有効範囲内に入れば獄門疆自体の呪力で位置が特定されてしまう。
頭から煙を噴出させる漏瑚に夏油は肩をすくめた。
「暑いよ、漏瑚。大丈夫、1分と言ってもね……」
崩れた牌を片付けながら、ゆっくりと自身のこめかみを指差す。
「五条悟の脳内時間で1分だ」
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