第20章 10月31日 渋谷にて
突如、渋谷駅のホームに入ってきた電車を見て漏瑚は笑った。
「来たな!」
ホームに閉じ込められていた一般人もここから出られる可能性に喜ぶ者がおり、我先にと電車へ駆け寄る。
「電車だ!どけや、俺が乗る!」
しかしその車内を見て二の足を踏んだ。
車内にいるのは人間ではなく、怪物。
しかも車内が狭すぎて窓にみっちりと押しつけられてい状態だ。
次の瞬間、電車のドアが開き、中から出てきた改造人間が目の前にいた男の額を潰した。
それに連なるように改造人間が大挙してホームに雪崩れ込み、次々と一般人を襲い始める。
ある者は大きな口に喰らいつかれ、ある者は手足を引きちぎられ、またある者は鋭い爪で腹を切り裂かれ・・・
命を脅かされた人々はホーム中を逃げ惑い、悲鳴と断末魔が響き渡る。
車内にいた改造人間が全て外へ出ると、最後に真人が足取り軽やかに電車から降りた。
上機嫌に漏瑚に手を振る。
「漏瑚〜!いやぁ、空気が美味しいね、恐怖が満ちてる。やっぱり人間も少しは残そうよ、週末は森に放して狩りをするんだ」
「森ごと焼いていいのか?」
「花御に怒られるよ」
軽い口調でたしなめた真人とは対照的に漏瑚は重々しく告げた。
「花御は死んだ」
「……マジ?」
混乱極まる渋谷のホーム。
改造人間が手当たり次第に一般人を襲い、逃れようとする人々が塞がれた出口へ雪崩れ込み、パニックになっている。
逃げ惑う人々の中に立ち止まった五条は瞠目して電車を見つめていた。
「……何考えてやがる」
ヤケになったのか!?
人間が減って困るのはオマエら呪霊の方だろ。
意図を掴みかねる五条に、引き延ばした改造人間の上に乗った真人が襲いかかった。
しかしそれも無限に阻まれて届かない。
「ハハッ、マジで当たんない!」
楽しそうに顔を歪める真人、五条にとっては初めて見る顔だったが、その特徴は以前に報告されたものと一致する。
ツギハギ……!
七海と悠仁が言ってた奴か!!
術式は維持したまま殴り飛ばした。
「人間のキショい所、1つ教えてやるよ」
おもむろに真人が天井を指差す。
「いーっぱいいる所」