第20章 10月31日 渋谷にて
エスカレーターの手すりを滑り降りると、ホームの時刻表の前に1人だけ膝を抱えている人がいた。
「……遅かったかな」
B5Fに逃げ込んだと思われる人間がたった1人だとは到底考えられない。
冥冥は警戒して立ち止まったが、虎杖は膝を抱える女性に駆け寄っていく。
「おい!そこの人、大丈夫か?他の人達はどうした?」
その女性は呆然と線路の方に目を向けていた。
「みんな、化物に……電車、に、乗って……私は……」
そう呟くとみるみる顔が歪に膨らんでいく。
「満員だッタカラ!いらないっで!!」
泣き叫ぶようにそう言うと、ぐちゃりと血を流して倒れた。
吉野 順平と同じ、魂の形を変えられた者特有の絶命。
虎杖は思わず歯噛みした。
「アイツがいたんだ……クソッ」
はたと女性が絶命する前に言っていた言葉が蘇る。
―みんな、電車に乗って―
「五条先生……!」
明治神宮前を発車した列車の向かう先は渋谷だ。