第20章 10月31日 渋谷にて
21:03 東京メトロ明治神宮前駅 B2F
階段を降りてきた虎杖が立ち止まる。
少し先には巨大なバッタのような呪霊が、ボリボリと生々しい咀嚼音を立て、スーツ姿の人間を喰っていた。
「おン?何見テんだヨ」
頭を喰われ、ビクビクと痙攣する手を見て、虎杖の表情が険しくなる。
「オッオマエ、ジュジュチュ、じゅつ、呪術師だろ?ナァ?俺は賢いんダ」
「ツギハギ顔の呪霊が来てるだろ。どこにいる?」
「ツギ、ハギ……?ツギハギ?」
「顔に縫い目のある奴のことだ」
「馬鹿にスルな!それ位知ッテる!俺は、賢い……」
やけに自分が賢いことを強調する巨大バッタは、4本ある腕の内の2本で下を指差した。
「真人は下、俺はココで帳ヲ守ってるンだ」
「マヒト……」
順平もそう呼んでたような……
いや、今は名前なんてどうでもいい。
帳を上げないことにはアイツがいる下の階に行けない。
―結界術は難しいからね、強くてもできない奴は結構いるよ―
僕は両方できるけどね、と自慢げに言っていた五条の言葉を思い出し、目の前の巨大バッタを見据える。
コイツが帳を2枚も?
なんだかな……
疑問を抱いていると巨大バッタの背後に大型の釘のような、楔のような何かが打ちつけられているのを発見する。
呪符がグルグル巻きにされたソレは呪力を持っている。
そして、巨大バッタの先程の言葉の違和感。
「降ろす」でも「張る」でもなく「守る」って言ってた。
となると、アレはかなり怪しいな。
とりあえずブッ壊す。