第2章 放課後遭難事件
五条に連れられ、構内を進んでいく。
「まずは、夜蛾学長と面談ね。学長のことは知ってる?」
「はい、兄もここに通っていたので……夜蛾学長は、傀儡呪術学の第一人者と聞きました」
しかし、なずなの隣を歩いている五条も負けず劣らずの人物だ。
日本に4人しかいない特級呪術師の1人で、呪術界最強との呼び声も高い。
なぜこんな人が高専の教師をしているのか謎なのだ。
案内された建物に入ると、ろうそくの灯った柱がたくさん並んだ広い部屋だった。
その最奥、見事な掛け軸の前に、サングラスをした強面の男性が座っていた。
しかし、なずなはその男性より周りにある色とりどりのぬいぐるみに目が釘づけだった。
……あれが、呪骸?
もっとこう、マネキンのような人形を想像していただけに、可愛らしい……とは少し違うが、ぬいぐるみであることがなずなには大きな衝撃だった。
「遅いぞ、悟。……その子が新入生か」
「は、はい。渡辺なずなです」
改めて夜蛾の顔を見ると、やはり威圧的で少し怖い。
「何をしにここへ来た?」
「え、えっと……」
緊張してとっさに答えが出てこない。
隣で五条が始まった、と呟いたのが聞こえた。
一体、何が始まったの……?
私が呪術高専に入学するのは、決まってたことじゃないの?
「呪術師になりたいから、です」
「違う、その先だ。何のために呪術師になる?」
「……人を守るためです。父は、呪術師は誇り高い仕事だと、渡辺家は代々この仕事をしてきたと言ってました。私もそれを引き継ぎたい」
「父親に言われたから、だと?君自身は何も考えていないということか?」
「ちが……!」
違うと言い切れなかった。
昔から何かにつけ流されてきた自覚がある。
なずなが言葉に詰まっていると、夜蛾が畳み掛けてきた。
「今一度問う、君は家系に課された義務で呪術師になると言うのか?」
「わ、私は……」
違うと言わなければいけない。
そうしなければ、入学を許可されない。
そんな気迫が伝わってきた。