第35章 断章 波乱万丈!成人の日
それは一生に一度のお祝いの日―……
地元に帰り、成人式を終えたなずなは振袖姿で伏黒を待っていた。
式は小学校区で行われており、伏黒とは別になってしまったためだ。
また、当然だが虎杖や野薔薇も地元に帰っているので、成人式を一緒に過ごすことは叶わなかった。
恵くん、どんな格好なんだろう?
正装もきっと似合うんだろうな。
想像して胸を躍らせていると、すぐ近くにタクシーが止まり、伏黒が降りてきた。
想像以上の姿になずなは目を見張る。
黒い服装は普段もよく着ていて見慣れていたが、同じ黒でも正装だと全然違う。
本人が色白なこともあって黒の正装がその端正な顔立ちを際立たせている。
「悪い、少し遅れた」
「ううん、大丈夫。こっちこそ来てもらってごめんね」
「着物だと移動も大変だろ」
伏黒も伏黒でなずなの振袖姿に一瞬言葉を失った。
「ど、どうかな……?」
薄桃色の地に翡翠色や山吹色、紫苑色の花々が流れるように描かれた総絞りの振袖。
華美になりすぎず、それでいてどこか上品さを感じさせ、なずなによく似合っている。
髪飾りも着物の風合いに合わせてあり、結い上げた髪やメイクも普段とは違う華やかさを醸し出していた。
「……すごく、似合ってる」
こういう時、気の利いた褒め言葉が出てこない自分が憎い。
「えへへ、嬉しい……!」
なずなもはにかんだように笑顔を見せる。
「恵くんもすごく格好良いよ」