第31章 断章 Happy Merry Birthday
そして来たる12月22日―
さすがに夜は任務の調整ができなかったので誕生日会は昼に行うことになっている。
2ヶ月間の特訓でパエリアの調理手順はバッチリ。
ケーキは不可抗力なので仕方ないとして、間違えてクリスマス仕様になってしまったプレゼントだけがなずなの心に重たく引っかかっていた。
結局クリスマスラッピングをどうすることもできず、せめて外から見えないようトートバッグに入れて隠し、パエリアの支度をするために部屋を出る。
トボトボと食堂へ向かっていると、伏黒と鉢合わせた。
「おはよ、なずな」
「お、おはよう恵くん……その、お誕生日おめでとうっ」
「?、あ、ああ」
伏黒は一目見てすぐなずなの態度がぎこちないことに気づいた。
八の字に眉を寄せて目はどこを捉えるでもなく泳いでいるし、手もそわそわと落ち着かない。
こういう時のなずなは十中八九何か言えないことがあって困っている状態だ。
「あのっ、お昼のお誕生日会楽しみにしててねっ」
そう言い残してそそくさと立ち去ろうとしたなずなの手を捕まえる。
「どうしたんだ?」
「え、えーっと……」
伏黒は屈んで、俯いてしまったなずなと視線を合わせる。
「何かあったのか?」
「……っ、わ、私、準備があるから……!」
ひゅっと息を呑んで苦し紛れに話題を変えようとする彼女を見て図星だ、と直感した。
意地悪をするようで少し気が引けるが、伏黒は掴んだなずなの手を離さずに言う。
「何があったか言うまで離さないからな」
「えっ!?」