第31章 断章 Happy Merry Birthday
「恵くんの誕生日のお祝いなんだけど、サプライズはどうかなって思ってて」
そんな相談をなずなから持ちかけられた野薔薇は片眉を上げた。
「サプライズ?……それ、大丈夫なの?」
「えっ、どうして……?」
「アンタ、割と顔と態度に出るから隠し事できないでしょ。伏黒も鋭いとこあるし、ほぼ確実にバレるわよ」
「でも、こう、うまいことそういう話題にならなければ……」
「じゃあ仮にそういう話題が出そうになったらどうするの?五条とか絶対話題にすると思うけど隠し通せる?」
「うぅ……」
小さく呻きながらそのシチュエーションを想像する。
もし五条先生に「誕生日会はするの?」って聞かれたら……
「しないです」は絶対にダメ、すごく冷酷な彼女になっちゃう……!
かといって「します」だとサプライズにならないし……
あっ、「秘密です」とかなら……
でも五条先生、その後絶対に追及してくるよね……
口をへの字にしてどんどん困り顔になっていくなずなを見て、野薔薇は肩をすくめた。
「悪いことは言わないからやめときなって。サプライズって成功すればいいけど、事前にバレたら祝う側も祝われる側も気まずいわよ?バレてないフリも知らないフリもどこかで限界が来て残念感がすごくなるから」
「た、確かに……」
野薔薇の言うことはもっともで、誕生日当日まで伏黒に勘付かれずに過ごせるかと言われると、あまり自信がない。
それどころか途中でバレてしまう未来は容易に想像がついた。