第28章 断章 浜辺の誘惑
だが、せっかくなら準備万端にしたいという野薔薇の提案で買ってきた水着の試着会が始まった。
チューブトップの水着に着替えた野薔薇の次になずなが着替え終わって出てくる。
「ど、どうかな?」
「いいじゃない、物だけ見た時は子供っぽいかと思ったけど、ちゃんとしたデザインね。さすがプロが選んだだけあるわ……伏黒を悩殺できるか怪しいのだけが気になるけど」
「悩殺なんてできないから……!」
真希の着替えを待つ間、水着だけで無理なら仕草で悩殺を狙えとさりげなく腕を絡ませて自然な風に胸を当てるだの、泳げないフリをして手取り足取り教えてもらえだのなずなが顔を真っ赤にするような話が次々と飛び出してくる。
「人目のない所で仕掛けるのよ。あのムッツリのことだから、人がいる場所だとカッコつけようとするだろうし」
「わ、私には無理だよ……!」
「アンタ、そんなんじゃいつまで経っても進展しないわよ?」
進展しないのは嫌だが、色気なんて皆無の自分がそんな大それたことをして驚かれるならまだしも呆れられないか、なずなはそこが心配で仕方ない。
「とにかく!」
野薔薇が更に攻勢を強めようと前に乗り出したのとほぼ同時に着替え終わった真希が出てきた。
「ちっと小さかったな」
「!!?」
ビキニ姿の真希に野薔薇もなずなも驚愕のあまり言葉を失った。
飾り気のない黒いビキニ。
普通に着ればなんともないもののはずが、真希が着るとそれはもう破壊力抜群だった。
黒が真希の白い肌を際立たせ、引き締まった二の腕や長い脚、見事な腹筋を惜しげもなく晒しており、極めつけは小さな布地から溢れそうになっている柔らかな双丘。
水着に派手な模様や凝ったデザインなど必要ないと言わんばかりの肉体美だ。
同性の自分達が見てもそう思うのだから男子連中が見ればその威力たるや、想像を絶するものだろう。