第28章 断章 浜辺の誘惑
そして場所は水着売り場に戻る。
「恥ずかしがるのもいい加減にしなさい!そんなんじゃ伏黒を悩殺できないわよ」
「の、のの悩殺!?そ、そんなことできないよ……!」
悩殺ってこう、もっと色っぽい大人のお姉さんがやるから意味があるのであって、私が同じことをしても全く効果がない……!
むしろ馬子にも衣装というか、着るのにも無理があるというか……
「わ、私、やっぱり持ってる水着で大丈……」
「アンタが持ってんのはただのスクール水着じゃない。せっかくの海なんだからあんな地味な水着許さないわ」
「で、で、でもこれは華美すぎるというか、何というか……!」
「こういう時にこういうの着ないでどうすんの!」
押し問答を繰り返していると別サイズのコーナーを見ていた真希が顔を出した。
「まだやってんのか?こっちまで聞こえてるぞ」
「真希先輩!」
「真希さんは水着決まりました?」
「ああ、これにする」
真希が手にしているのは華やかな柄の水着が並ぶ中どこで見つけたのか、黒一色のビキニだ。
「なずなも好きな柄選べばいいんじゃないか?周りが無理強いするもんじゃねぇんだし」
「でもスクール水着でいいって言うんですよ。そんなんで海行ったら埋もれません?」
「!?」
埋もれる!?
……た、確かに海に行くのは自分達だけじゃない。
大人のお姉さんもいるわけだし、伏黒くんが目移りしちゃう可能性も十分あり得る……で、でも!伏黒くんとお付き合いしてるのは私なんだからそんな風に考えること自体が伏黒くんに対して失礼なんじゃ……